国立教育政策研究室によれば、半年間、継続的に続く虐め事例は、全体の半分以下。
一年間では全体の1%に満たないのだという......
などと大仰な前説で始まる本作は、イジメを受け、日々鬱屈した生活を送る主人公【芥海】が謎の占い師【ブ男】によって【スタンドゥ】能力に目覚める事から始まります。
洗脳と一口に言っても様々ですが、本作ではその洗脳過程を細分化し、誘導・深化・昏睡という三つのプロセスで説明しています。
誘導とは、日常的な会話をしつつ相手の動揺を誘い、意識の空白に暗示を埋め込む事によって意のままに動かすという【サイコマーキング】という洗脳導入段階。
深化とは、【スタンドゥ】能力によって相手の心象迷路を突破し、意識の混濁と弛緩を深める洗脳準備段階。
その二つを経て至る昏睡になって初めて主人公は【幻視(ヴィジョン)】という認識を強制する能力を使えるようになります。
これが洗脳完了段階ですね。
そういった洗脳過程をシッカリ描く事によってバカみたいなノリで始まった本作をニュートラルな地点まで戻す事に成功しています。
そもそも最初のノリのままギャグエロ展開にしても良かったハズなのに何故こんなにも丁寧に洗脳を描いてプレイヤーを素の精神に戻してしまうのか、と私はプレイ当初思いました。
しかし、そんな疑問もプレイを進める事によって氷解する事になりました。
それは本作に登場するヒロイン達の裏の繋がりが洗脳を進めていく事によって明らかになっていったからです。
確かに最初のままギャグチックに進めていたら、この展開に脳が追い付かなかっただろうな、と納得出来ました。
過去の事件が色々な人物の人間関係・人格形成に影響を与えている事実を知った時、プレイヤーは本作が単なる洗脳ゲームじゃなかったんだと気づかされる事になるのです。
悲惨な過去やちょっとした行き違いで道を踏み外したりグレてしまったヒロイン達は非常に人間臭く、愛おしいと思える事請け合いです。
と、まぁ堅苦しい書き方をしましたが、本作の文も同じくらい固いです基本。
しかし、私の文章と違って随所で飛び出る主人公の暴言.......というか本能に忠実な言葉の数々が笑いを誘ってくれるモノとなっております。
朝起きて「子種便所がボクを待っている......」だとか寝る前に「子種ミルクを大量錬成するためにさっさと寝るぞ」などといったバカ発言を繰り返す主人公と、真面目な地の文が軽快に読み進める手助けをしてくれる事間違いないです!
ちなみに私の推しキャラである古閑弥生先生は、出会った当初は八方美人で色んな意味で大人な方だったのに、洗脳を強めていった結果、プレイヤーが他の先生と話しただけで嫉妬してくるようなイジらしい女性に変貌します。
これが調教結果で無理矢理変心させられたなら胸にクル事は無いのですが、これが本心を曝け出された結果ならどうでしょう?
カワイイったらないぜ!!!!
古閑先生にメロメロになりすぎて何周もしてしまった人、アンタとはいい酒が飲めそうだ。
やっぱり本能解放させる洗脳が一番だなって改めて確信させてくれた作品でした。